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表面はシャリっと、中身はプルッとした不思議な食感。氷の表面にわずかに霜がかかったような、透明感のあるビジュアルが"映える"と評判の「琥珀糖」をご存じでしょうか。
クリスタルのように光を受けてキラキラと輝く様子が「まるで宝石のよう!」と話題を呼び、インスタグラムなどのSNSを中心に、あっという間にトレンドの最前線へ躍り出ています。
しかしこの琥珀糖、じつは伝統的な和菓子。京都をはじめとする老舗の和菓子舗で、ちょうど今ごろの初夏から夏に登場してきた定番菓子です。
氷のかけらを思わせる様子、シャリシャリと心地よい歯触りやホロホロと軽やかな口溶け、ほんのりした甘みは実に涼やかな印象。「わり氷」や「氷室」など清涼感のある菓銘を授けられ、夏の茶席に干菓子として多く用いられてきました。
そのルーツは江戸時代に遡ります。もともとは舶来品で「薬」とされるほど貴重で超高価だった砂糖が、江戸時代中期になると讃岐をはじめ日本各地でつくられるようになって、少しずつ庶民の口にも入るように。その砂糖と、やはり江戸時代に生まれた寒天が出会って琥珀糖が生まれたのだといいます。
当時の呼び名は「錦玉羹(きんぎょくかん)」「錦玉糖(きんぎょくとう)」「錦玉」とも。もともとはクチナシで色付けされたもので、その色合いが琥珀を思わせることから「琥珀糖」の名前で呼ばれるようになったのだとか。
意匠に決まりごとの多い和菓子にあって形状や色合いの自由度が高く、つくり手によってさまざまな工夫が施され、今に伝わっています。
琥珀糖の基本的な原料は、砂糖と水と寒天。昔は、色は食紅の濃淡、味は砂糖水の甘さだけでしたが、今では色合いのバリエーションも増え、健康にも配慮した天然由来の色素も登場。また、リキュールや果汁、フルーツピューレを使うことで、レモンやブドウ、サイダー、ストロベリーなど香りや味わいのバリエーションも豊富に。すりガラスのような琥珀等の中心にドライフルーツを閉じ込め、ほんのり透けて見えるものも。
もはやつくり手も和菓子職人だけではありません。パティシエも洋菓子の技術を生かして参戦。琥珀糖専門の工房も登場し、ますます注目を集めています。
専門の工房の中でも目を引くのが、宝石や鉱物を模した琥珀糖。繊細にシェイプされたジュエリーそっくりなものに、天然自然の結晶そのものの美しさを映すもの。つくり手によって色も形もさまざまです。なかには12カ月の誕生石を詰め合わせたボックスも。
最近は、琥珀糖の魅力にハマって自分でつくってみるという人も少なくありません。SNS上には日本国内だけではなく、海外からのアップする人も増えているといいます。
水と寒天を合わせて加熱、煮溶かしたら砂糖を加えるだけ。バットなどに流し入れて冷まし、粗熱がとれたら冷蔵庫で1時間冷やしましょう。固まったらカットします。手順は、たったこれだけ。
色をつけたいときは、バットに流し入れた後で。竹串や爪楊枝の先に、少量の水で溶かした色素をつけてくるくるかき混ぜれば綺麗なマーブル状に仕上がります。またカットするときは、ナイフで切れば端正な表情になりますし、手でちぎれば断面がランダムになって鉱物の結晶を思わせるイメージに。
温故知新、ますます進化を続ける琥珀糖。この夏、自分へのご褒美にしてみてはいかがでしょうか。お世話になっている方へのギフトにもおすすめ。一服の清涼感と話題性で、喜ばれること間違いなしです。
2022.06.10 17:42 | |
2022.10.04 13:22 | |
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