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ミニチュア独特のかわいらしさと、しっとりした和の趣で人気の小さな盆栽。苔やシダ、身近な山野草を植え込んだ鉢は、すっきりとシンプルながら存在感あり。住まいにいながら日本の自然を感じられます。
しかも飾るのに特別なスペースも広さも不要。マンションなどで引っ張りだこなのも納得です。しかし、そうはいうものの相手は生き物。自分には難しいかもとためらう人も多いはず。
そこで苔玉や盆栽のワークショップを各地で開く植物研究家・塩津丈洋さんに、小さな盆栽を住まいに迎えるときのコツを教えていただきました。
塩津さんのアトリエ「塩津丈洋植物研究所」は、東京郊外の趣ある一軒家。この家のアトリエや、都内のセレクトショップなどで、塩津さんのワークショップは開かれています。
その参加者は子どもからお年寄りまで。初めて植物を育てる人や、今まで何回も枯らした経験をもつ人までいろいろ。しかし作品ができあがるころには、みんなが笑顔になっています。
「世の中には絶対に植物を枯らしてしまう人も、枯れてしまう住まいもありません。問題は植物の選び方と環境。それさえクリアすれば、盆栽も難しくありません」塩津さんが初心者から相談を受けたときにすすめるのは苔やシダ。
「丈夫な種類が多く、置かれた環境に順応する能力も高い。日陰にも適応し、日の当たる時間が限られるマンションなどにもおすすめです」特にマメヅタを植えた吊り玉は、育てやすくワークショップの花形です。
ひもで吊り下げるタイプだから飾る場所を選ばず、お世話も簡単。3日に1度の目安で水にじゃぼんと数秒間。あとは水が切れるのを自然に待つだけで青々と元気な姿を楽しませてくれるのです。
草木を植え込んだ盆栽を作るときは、住まいがどんな環境か相談を受けながら植物を選び、大きさを整えます。陽当たりはどうか、風通しはあるのか、屋外にスペースはあるのかなどなど。
「みなさん意外にご存知ないことなんですが、じつは盆栽の普段の居場所は屋外なんです。眺めて楽しむのはテーブルでもキッチンでも好きなところで、ただし水やりなどのお世話は屋外で、が基本。これが観葉植物との一番の違いです」
温暖な環境で育つ観葉植物と違って、盆栽の植物の多くはもともと日本の野山に育って、閉め切った屋内は大の苦手です。とくに現代の住まいは気密性が高く、夏は室温40度超えになることも。
「マンションならベランダの一画でOK。小さな棚がひとつあれば十分です。部屋に入るときは好きな場所に置いて、出かけるときはベランダに。これが盆栽と一緒に快適に住まうコツ」
「あと1点気をつけることは大きさですね。樹木なら、私がお薦めするのは鉢も含めて高さ20センチ以上。それより小さな盆栽は植物を支える土が少ないし、若木の可能性が高くて初心者には難しい。盆栽とはいえ、ある程度の大きさのほうが元気に育ってくれますよ」
完成したものをショップで手に入れるのもひとつの方法だけれども、どうせならワークショップに参加して自分で植え込んだ盆栽を。そうすればつくる楽しみも育てる楽しみも味わえるはず。世界にひとつの盆栽と一緒に暮らす楽しみを味わってみてはどうでしょう。
講師:塩津丈洋さん(塩津植物研究所)
芸術系の大学でデザインや木工を学ぶ中で植物の魅力に惹かれ、盆栽職人のもとで修業。都内をはじめ全国各地で、盆栽作りや植物を育てるためのワークショップを開催。ショップやレストランのグリーンや、住宅の庭づくりも手がける。植物に関する困った!を解決する駆け込み寺。
2019.06.05 20:56 | |
2019.07.26 15:18 | |
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