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日本各地において、古くから職人の手で受け継がれてきた郷土玩具、民芸品。「かわいいな」「思い出になるな」など、何げなく手にとって旅のおみやげに買う方も多いと思いますが、そこには誕生した理由、歴史、そのものが持つ意味合いなど、さまざまな物語があります。
今回は、愛らしい3つの郷土玩具・民芸品をご紹介します。
ひとつ目は、飛騨高山の「さるぼぼ」です。さるぼぼは奈良時代に中国から伝わり、貴族社会の安産のお守りとして産屋に飾られたものが日本最古のぬいぐるみの原型と言われています。
さるぼぼとは、飛騨の方言で「猿のぼぼさ(赤ん坊)」という意味。昔、母親や祖母が子どもや孫にさるぼぼをつくってあげる風習があり、その人形が猿の赤ちゃんに似ていることから、こう呼ばれていました。
さるぼぼといえば赤が有名ですが、現在はさまざまな色があります。写真は「風水さるぼぼ」で、赤は家庭運、黄色は金運、ピンクは恋愛運、緑は健康運、紫は長寿、黒は厄除けなど、風水になぞらえた色でそれぞれの福を願います。最近は子宝運のオレンジが人気だそうです。
勉強運の青を使った「必勝合格さるぼぼ」は、受験シーズンに人気。学校の先生らしき方が、生徒の分をまとめて買うこともあるそうです。
飛騨高山を訪れる外国人に人気なのが、ゴージャスな「黄金さるぼぼ」。黄色よりもさらに強い金運・勝負運のパワーが込められています。
「目がない」というのが、さるぼぼの魅力のひとつ。子宝を望む人は赤ちゃんの顔、素敵なご縁を望む人は未来の伴侶の顔...持つ人の想い次第でいろいろな顔に見え、愛着が湧くといいます。伝統を受け継ぐ地元の方々が、心を込めて手づくりしたさるぼぼは、買う人の想いや願いをきっと叶えてくれる。互いの心が通い合うものなのだと思いました。
続いては、ゆらゆらと揺れる首と愛らしい表情が特徴の「赤べこ」です。
約1200年前、会津柳津円蔵寺建立の際、巨大な材木運搬に使役された牛馬が数多く倒れた中、最後まで働き通したのが赤色の牛。その言い伝えから、会津では「べこ」の如く「重荷に耐えて壮健であれ」と、子どもの誕生に赤べこを供えてお祝いしました。
「かわいい」という印象の赤べこですが、この言い伝えから、忍耐や魔除けとしての意味合いを持ち、そのギャップも魅力のひとつです。
こちらは、きれいな桃色で、背中に「寿」の文字、まわりに松竹梅が描かれた「ももべこ」。「皆さまに幸せが届くように」という願いが込められており、結婚式の引き出物にしたり、女性に人気が高いそうです。
「赤べこ」と同じ会津に伝わる「起き上がり小法師」も、長い歴史を持つ民芸品。約400年前、会津藩主・蒲生公が産業を盛んにするため藩士につくらせ、正月に売り出したのが始まりと言われています。
独特の形や起き上がるときの揺れる動きに、癒しを感じる方も多いと思いますが、「何度転んでも起き上がる、七転八起の精神」を持っています。
「赤べこ」も「起き上がり小法師」も、山あり谷ありの人生の中で、辛いときはこれを見て元気と勇気を感じてほしいという想いが込められています。辛抱強く育つようにと、会津の人が教えられてきたことが、民芸品を通して伝え継がれている。そんな意味もあるようです。
写真は、会津の偉人、野口英世の起き上がり小法師。何度つまずいてもあきらめずに立ち上がって成し遂げた、博士の生涯と重なります。
これらの起き上がり小法師は、会津で唯一、手づくりで伝統を守り続けている「山田民芸工房(Amazon)」さんの商品。昔ながらの素朴な形と表情、そこから漂うわびさびが、ほかにはないと人気だそうです。
歴史があり、意味や願いがあり、作り手の想いがある郷土玩具、民芸品。実際にその土地に行ってみると、さらに深くわかること、感じることがあるかもしれません。
2019.06.05 19:16 | |
2019.07.26 15:17 | |
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