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テレビや新聞・雑誌などで最近取り上げられるようになってきた「フレイル」。この言葉を皆様はご存じでしょうか?
日本老年医学会は、高齢者の筋力や活動が低下した状態(虚弱)を「フレイル」と呼ぶことを提唱しました。「フレイル」の語源は英語のFrailtyとされており、もろさ、はかなさ、弱さ、虚弱などと訳されています。75歳以上の多くは、この「フレイル」を経て、「要介護状態」になるといわれています。つまり、「フレイル」とは、健常な状態と要介護状態(日常生活でサポートが必要な状態)の中間のことをいいます。
ここに二人の事例をご紹介します。どちらも、プレミアム時代(成熟した年齢)の方で、現在は老人ホームにご入居されています。ホーム入居前にお暮らしぶりを伺いました。
80歳代の女性Aさんの話です。
毎日の日課はラジオ体操。365日欠かしたことがありません。ラジオ体操の会場までは往復30分を速足で歩き、自分で体力を感じるようにしています。疲労がたまるとすぐに身体にあらわれます。
月に1度は美術館や映画館へ出かけます。心の栄養をたくわえるようにしているのです。旅行も好きで、近くの旅行でもいいので3ヶ月に1回は計画します。美味しいレストランを探して外食をすることも楽しみの一つです。
持病はもっていますが、定期的に受診し、医師とはなんでも話をします。医師からは、できることはなんでも自分でやるようにと言われています。
この方はホームにご入居後も積極的に体操プログラムに参加され、それまでどおり美術館や映画館、旅行に定期的に行かれています。ときどき風邪をひかれることもありますが、医師の処方箋ですぐにお元気になり、ホームのプログラムを欠席されたことが一度もありません。
70歳代の女性Bさんの話です。
人の付き合いが苦手です。特に、近隣の方の風評や、地域や一族のしきたりが苦手です。外に出るのにも洋服や化粧が気になり、ほとんど家からでません。
テレビが友達です。膝や腰が痛くて、ほとんど家でごろごろしています。
食事は、夕方に近くのコンビニでお弁当を買い、お台所で食べるものを作ることもありません。一日中、お弁当やお菓子を食べてはごろごろ、といった生活です。ゴミの分別も面倒くさくてできません。近所の目があるので、ゴミを出すのも躊躇してしまい、家が片付きません。
このBさんは、先程のAさんより若いのに、外見はAさんより老けて見えます。表情も乏しく、皮膚や身体の張りなく、足も細くゆっくりと慎重に歩いています。
ホームにご入居後もプログラムに参加されず、食事はあたふたと食べ、すぐに居室に戻られます。ある日、風邪をひき、高熱が出て肺炎になってしまい、入院されました。
さて、AさんとBさんの違いはなんでしょうか?このBさんの状態こそ、フレイルです。気付かないうちにフレイルになっていたのです。
一方、Aさんは日頃から身体や心の健康に注目し、健康セミナーに参加したり、運動のプログラムに取り組んだりと、意識そのものが介護の予防となっていたのです。
Aさんのように、日頃から身体や心への意識をもつことで、介護予防はできます。しかし、これからの高齢時代に問題となるのが、介護予防への取り組みに“意識がない方”です。
どんなに行政やマスコミが情報を発信しても、意識がない方には、その情報を見ることすらしないため届きません。そうした方たちこそ、支援を必要としているのです。「フレイルなのでは?」という兆候に周囲にいる子供たちや親族が早く気付き、ご本人の意識に働きかけることが必要なのではないでしょうか。
親のことであれば里帰りしたときや、地域住民どうしであればお祭りや行事にお誘いし、「どのように、お過ごしですか?」からフレイルの兆候を感じ取ることが大切です。米国老年医学会発表のフレイル評価表を参考にしてみてください。周囲の人の目配り、気配り、心配りが、一人ひとりの介護予防に繋がります。
2019.05.27 22:46 | |
2021.01.14 16:42 | |
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