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寒風吹きすさぶなか、恋しくなるのが熱々のおでん。出汁のしみこんだダイコンやコンニャク、つゆをたっぷり含んだ厚揚げやがんもどき、練り物やよく煮しまった玉子をハフハフと、家族みんなで頬張るのは冬ならではのお楽しみです。
つくる側からみても、おでんは楽ちん。コンニャクに隠し包丁を入れたり、ダイコンを下茹でしたり、ゆで玉子をつくって殻をむいたり、いくらか下ごしらえは必要ですが、子どもたちと一緒に「せーの!」でやってしまえば、あとはお出汁と時間がおいしいおでんに仕上げてくれます。
ただ、おいしくて楽しいおでんにも、ひとつだけ弱点あり。お出汁とお醤油、みりんや料理酒というシンプルかつ基本な味付け&定番のおでんダネばかりでは、どうしても単調になりがち。「また、おでん~?」という声が家族のなかから聞こえてきそうです。
そこで、おすすめなのが日本各地のご当地おでんにヒントをもらうこと。ひと口に「おでん」といっても、じつは地域によって大きな違いがあるのです。その土地ならではのおでんダネや出汁の味付け、薬味の力で、まるで別の料理に! この冬、食卓に何回おでんが登場しても、文句は言われません。
そんなローカルおでんの代表が静岡おでん。最近はご当地B級グルメとして全国的にも高い認知度を獲得しています。地元の濃口醤油ベースの黒い出汁に串刺しのダネがたっぷりつかったおでんは、静岡のソウルフード。市内の駄菓子店にはこのおでん鍋が必ずといってよいほどあり、学校帰りのおやつとして好まれてきたのだとか。
その特徴は、
店ではつゆを長年継ぎ足し継ぎ足しするうちに、おでんダネの練り物や牛すじのいま味がとけだして深い味わいに。地元で取れるイワシやサバなど新鮮な青魚を原料にした黒はんぺんは、皮や骨も丸ごと使っているから味わいが濃厚で栄養満点です。
食べる直前にふりかけるだし粉も、地元で水揚げされるカツオやイワシ、サバなどの削り節を細かく砕いたもの。青海苔と一緒にふりかけると香ばしさ満点。食欲をそそります。
つゆの継ぎ足しが生むうま味をおうちで再現するのは難しいかもしれませんが、醤油を静岡の濃口醤油に置き換えたり、黒はんぺんを取り寄せて加えたり、だし粉をふりかけるだけでも、静岡おでんの雰囲気を楽しめます。
もうひとつ、ローカルおでんの代表格といえるのが名古屋名物の味噌おでん。愛知県で味噌といえば、八丁味噌をはじめとする豆味噌。味噌煮込みうどんや味噌カツなど、赤褐色で味わい深い豆味噌を使った料理は愛知県民のソウルフードといってよいでしょう。
おでんも例に漏れず、豆味噌ベースなのです。初めて見る人はビーフシチュー並みの濃い色に驚くかもしれませんが、食べてみると意外にしょっぱくはなく、豊かなうま味と甘味が口いっぱいに広がります。
おうちで挑戦するなら、いつもの出汁に豆味噌を加えてのばし、そこにダイコンやコンニャク、玉子などの下ごしらえしたおでんダネを入れて弱火で煮込みます。練り物は煮込みすぎないよう後から加えるのがおすすめです。
ダイコンやコンニャク、玉子が味噌色に染まったら完成。熱燗はもちろんですが、白いご飯に合うことこのうえなし! 特に玉子をほぐしてつゆと混ぜ合わせると、何杯でもおかわりできるほど。子どもたちも大好きな味わいです。
さらに加賀百万石の都、金沢にもローカルおでんあり。金沢伝統の車麩や、くるくる渦を巻いた北陸でお馴染みの練り物・赤巻き、バイ貝などご当地ならではのおでんダネがぎっしり。おうちでおいしく仕上げるコツは、つゆにしっかり昆布を効かせること。うま味がきいた澄んだつゆは、あと引くうまさです。
驚くことに、真冬の日本海で水揚げされた蟹もおでんダネとして登場。甲羅に身をぎっしり詰めたカニ面は見るからにゴージャス。地酒が進むことといったら!
このほか、テビチやソーキ入りの沖縄おでん、根曲がり竹入りの青森おでん、芹や春菊をおでんのつゆでサッとゆがく松江おでんなど、津々浦々にご当地ならではのおでんが存在しています。
また、食べるときにつける薬味もそれぞれ。青森では生姜の効いた味噌が、姫路では生姜醤油が、高松ではカラシ+白味噌が、おでんのよい相棒です。普段と違う薬味をちょい足しするだけでも、普段のおでんが変わるはず。
最近は、取り寄せできるご当地おでんセットやおでんつゆも登場。いつものおでんもいいけれど、たまに家族そろって旅する気分でご当地おでんを楽しんではいかがでしょう。
2023.02.17 09:05 | |
2023.02.17 09:06 | |
フード・ドリンク | |
ローカル, おでん |