医療保険で損しないために 本当に必要な保障とは?

医療保険で損しないために 本当に必要な保障とは?

  • 医療保険に入りたいけれど、多くの商品があり保障内容も複雑。どれがいいのかわからない
  • 保険会社の人に勧められたものに加入していて、見直したことがない

という方は意外と多いのではないでしょうか。そこで今回は、

  • 医療費への備えはどのくらい必要か
  • がん保険や医療保険の特約は必要か

など、個人が任意で加入する民間の医療保険について、必要なものを見極めるポイントを解説してみます。

医療保険の加入を検討する際、確認すべきポイント

  1. 公的医療制度のもとで、どれくらいの自己負担が発生するか
  2. 通院・入院・手術などで、どれくらいの医療費が発生するか
  3. 入院などで発生する損失があるかどうか
  4. 発生する負担をまかなう手段には何があるか
  5. 確率は低いが発生すると金額が大きいため、保険で備えておくべきものは何か

まず1.について。公的医療制度のもとで入院や手術などをした場合の自己負担額は、加入している健康保険(国民健康保険組合や全国健康保険協会、各企業の健康保険組合など)によって異なります。しかし自己負担が一定限度額を超えた場合、医療費が払い戻される「高額療養費制度」があり、1ヶ月の自己負担の上限額は70歳未満・年収約370~770万円の場合で「8万円+α」程度となっています(年齢や所得により上限が異なる)。

さらに、大手企業などの健康保険組合や公務員などが加入する共済組合では、「付加給付」の形で独自に上乗せを行っているところがあります。この場合、1ヶ月の自己負担上限額は加入者本人の場合「2万5000円」程度が多いようです。

また、「傷病手当金」制度では、①病気やけがで仕事につくことができず(労災対象を除く)、②連続する3日間(待機)を含み4日以上仕事を休み、③その期間中給与などがもらえない場合、最長1年6か月間、月収のおよそ2/3の金額を受け取ることができます。ただし、国民健康保険、後期高齢者医療制度では条例や規約で定められた範囲による任意給付のため、確認が必要です。

これら公的医療制度の保障の手厚さを考えると、保険料の高い民間の医療保険は必要ない場合が多いといえます。

次に、2.通院・入院・手術などでかかる医療費3.入院などで発生する損失について考えてみましょう。

公的医療制度による保障はありますが、入院する際にかかる費用は医療費だけではありません。入院時食事代の一部負担、個室や少人数部屋の差額ベッド代、入院中の雑費や交通費、公的保険対象外の治療を受けた場合や先進医療の自己負担分などが発生しますが、これらは公的医療制度の適用範囲外となります。また自営業などの場合、収入がなくなることによる負担(逸失収入)が発生します。

直近の入院時の自己負担費用と逸失収入の総額(単位:%)
  ~5万 5~10万 10~20万 20~30万 30~50万 50~100万 100万~ 平均
全体 6.7 18.5 31.0 13.7 14.3 10.3 5.5 30.4
性別  
男性 5.2 14.9 31.8 12.3 17.5 9.7 8.4 38.3
女性 8.0 21.7 30.3 14.9 11.4 10.9 2.9 23.4
年齢別  
18~19 0.0 0.0 0.0 0.0 100.0 0.0 0.0 30.0
20代 0.0 6.3 56.3 6.3 6.3 18.8 6.3 27.3
30代 4.4 20.0 37.8 17.8 6.7 8.9 4.4 24.0
40代 5.6 16.9 35.2 9.9 21.1 7.0 4.2 26.7
50代 5.1 21.5 26.6 13.9 12.7 12.7 7.6 36.3
60代 10.3 18.8 25.6 15.4 14.5 10.3 5.1 31.5

出典:(公財)生命保険文化センター「令和元年度 生活保障に関する調査」

上の表を見ると、入院時の自己負担費用と逸失収入の総額は10~20万円が全体の31%と最も多くなっています。このことから、「急に10~20万円が必要になっても困らない」「10~20万円の負担が生涯で数回起こっても貯蓄でまかなえる」という方は医療保険がなくてもいい、というのがひとつの考え方です。

とはいえ、確率は低くても難病にかかる可能性や入院を繰り返す可能性はあります。そこも含めて、十分に貯蓄をして対応できればいいという考えであれば、医療保険はなくてもいいでしょう。

一方、家族を支える現役世代、特に自営業では収入が止まって逸失収入が大きくなるケースがあり、状況が異なります。入院によって収入が減り、貯蓄でカバーすることが困難な場合は、医療保険の入院給付で一部を補てんするという考え方もあります。

直近の入院時の1日当たりの自己負担費用(単位:%)
  ~5,000 5~7,000 7~10,000 10~15,000 15~20,000 20~30,000 30~40,000 40,000~ 平均(円)
全体 10.6 7.6 11.1 24.2 9.0 12.8 8.7 16.0 23.332
性別  
男性 13.4 8.7 7.0 23.8 9.9 12.8 7.0 17.4 23.258
女性 8.2 6.6 14.8 24.5 8.2 12.8 10.2 14.8 23.396
年齢別  
18~19 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 100.0 42.857
20代 0.0 5.9 5.9 35.3 17.6 17.6 11.8 5.9 18.447
30代 8.3 6.3 12.5 25.0 14.6 8.3 10.4 14.6 23.564
40代 10.1 5.1 11.4 17.7 6.3 17.7 10.1 21.5 27.712
50代 11.0 7.7 11.0 28.6 4.4 7.7 11.0 18.7 22.957
60代 12.9 9.8 11.4 23.5 10.6 14.4 5.3 12.1 21.366

出典:(公財)生命保険文化センター「令和元年度 生活保障に関する調査」

入院基本料、治療費、食事代、差額ベッド代などを含め、入院時1日あたりの自己負担費用で最も多いのは10,000~15,000円、全体平均では23,332円です。高額療養費制度などによって実際の自己負担額はここまで多くありませんが、多くの方にとって生活を維持するためには、入院時の保障があるシンプルな医療保険に入っておいたほうがいいかもしれません

医療保険では加入時に健康状態の告知をしなくてはならない為、大きな病気の後や持病がある方は、加入できない場合や保険料が高くなる場合があります。また、年齢が上がるほど保険料が上がり、負担が難しくなってきます。このことから、健康な若い時期に安い保険料で加入しておくことは大切といえるのです

続いて4.発生する負担をまかなう手段には何があるかについて、これは大きく分けて収入、貯蓄、保険ということになります。医療保険は手段のひとつですが、普段の保険料の支払いが家計を圧迫して貯蓄ができないのは問題です。そこで現在入っている保険でチェックすべきポイントは、保障が大きすぎないか、ダブっていないか、特約をたくさんつけて保険料が高くなっていないか、終身型と定期型を正しく選んでいるか、です。

医療保険・がん保険の両方に加入していると、がんになった場合の入院給付金は両方から支払われるので、それを踏まえた入院給付保障額の設定が大切です。医療保険では入院・通院ともに給付金が支払われる日数に制限がありますが、がん保険では入院した場合の支払日数に制限がないのが一般的です。

また、がん保険ではがんと診断された場合に診断給付金(一時金)が出るものがあり、通院治療などにあてられるのがメリットです。ただしがん保険は、加入から90日間に診断されたがんについては保障対象外となる免責期間があるのが一般的です。

医療保険にも、がん特約、女性疾病特約、三大疾病特約(がん、脳卒中、心疾患)などがあり、がん保険と重複する保障内容があります。がん診断給付金をつけられるものや、通院治療を保障する特約もあります。

また現在、特にがん治療では次々と新しい技術が開発されており、技術料が保険適用外の治療があります。先進医療特約(保険料は一般的に100円/月程度)をつけることで、がんの先進医療である重粒子線治療や陽子線治療などの技術料(一般に200万~300万円)に対して給付金が出ます。これは、確率は低いが発生すると金額が大きいため、保険で備えておくべきもののひとつといえます。

医療保険・がん保険の両方必要か、医療保険に特約を付加すべきか、同じ保障をどの保険・どの特約で用意するのが最も安いかなどを比較検討することが大切です。がんなど病気のリスクが高くなる30代以上、子どもが小さい場合は、「入院給付金/手術給付金」のシンプルで安い医療保険に、特に必要と考える保険や特約を加えるといいでしょう。

保険の種類

おもな特約の例 保障内容 注意点
がん入院特約 がんで入院した時、入院給付金が支払われる。入院給付日数については無制限が一般的。 入院しないと給付金が支払われない。投薬治療を通院治療で行うケースなどが対象外となる。
特定(三大)疾病
保障特約
がん・心疾患・脳卒中により所定の状態になった場合、または死亡・高度障害の場合のいずれかで保険金が支払われる。 三大疾病のうち対象外の疾病があることがある(例.上皮内がんなど)
女性疾病
入院特約
保険会社の定める女性疾患(子宮、乳房の病気な甲状腺の障害など)で入院したとき、入院給付金が支払われる。 入院しないと給付金が支払われない。がんや骨粗鬆症等の疾病も含まれるが、どの疾病が対象かは確認しておく必要がある。
通院特約 所定の日数の入院後、引き続き通院した場合に給付金が支払われる。 保険料が高額になるケースが多い。また約款によるが、入院後の通院でないと給付金は支払われないのが一般的。
先進医療特約 厚生労働省が定める先進医療を受けた場合、おもにその技術科相当額について給付金が支払われる。 先進医療の対象となる治療が将来変化する可能性がある。先進医療を受けられ、かつ給付対象の医療機関が限られるため、遠隔地では別途交通費や宿泊費が発生する。

最後に保険の種類について。保険には、保険料が変わらず一生涯保障が続く終身型と、保障期間が決まっており保険料は更新ごとに上がっていく定期型があります。同じ加入時年齢で比べると、終身型より定期型のほうがその時点の保険料は安くなります。

また終身型でも、支払期間がずっと続く終身払いと、決められた年齢まで支払い、その後は支払いなしで保障が続く有期払いがあります。

最初の保険料は高くても、生涯に渡って不安を軽減したい人は終身型。生涯に渡って不安を軽減し、支払いは現役時代に済ませたい場合は終身有期払い型。今は収入が少なく保険料を抑えたい、満期ごとに保障内容を見直すことや保険を乗り換えるなど検討したいという人は定期型を選びましょう。

保健の種類 特徴 注意点
定期保険
  • 一定期間のみ保障される
  • 終身保険に比べて保険料が割安
  • 若いうちは割安だが更新ごとに保険料が上がる
  • 保険料は掛け捨て
  • 保障内容の見直しがし易い
  • 保険料は安いが掛け捨てなので不必要に高い保険金額にしないようにする。
  • 保険金減額の見直しはし易いが増額の見直しは年齢が上がっているため確実に保険料が上がる。
終身保険
  • 保障が一生続く
  • 定期保険に比べて保険料が割高
  • 高齢になっても保険料が上がらない
  • 保障内容の見直しがしづらい
  • 保険料が高いため、全ての保障を終身型にするのは望ましくない
  • 解約返戻金があるが途中解約すると殆どの期間で支払った保険料総額を下回る

医療保険選びのポイント

  • 入院した際の費用と貯蓄を照らし合わせ、家計を圧迫しないシンプルな保険を選ぶ。
  • ダブっている保障を見直し、必要な特約などをプラスする。
  • 終身型or定期型、どちらがいいかを考える(今払える金額と保障期間の検討)。

今回ご紹介したことをふまえ、現在入っている医療保険を見直してみましょう。

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