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今年6月、金融庁の報告書によって物議を醸した「老後資金2,000万円」問題。先日のニュースでは、老後資金報告書を撤回し、「案」のまま金融庁のHPに掲載を続けることが決まり、話題となりました。
このなかで公表された「夫婦で95歳まで生きると公的年金以外に2,000万円が必要」という内容を聞いて、不安になった方や、自分のライフプランについて考え始めた方も多いと思います。
そこで今回は、簡単にできるライフプランシミュレーション、年金の繰上げ・繰下げ受給のメリットとデメリット、そして、老後の医療費や生活費に備えるための保険について、解説していきます。
生活設計と生命保険に関する、さまざまな情報を公平・中立の立場で提供している「公益財団法人 生命保険文化センター」の生活保障に関する調査(令和元年度)によると、夫婦ふたりが必要と考える老後の日常生活費は、月額22.1万円。ゆとりある生活費は、月額36.1万円という結果が出ています。
ただ、これはあくまでも平均なので、家庭によって金額は変わってきます。
自分と家族について考えるときに大切なのは、どのような資金が必要になるかを把握しておくこと。
必要な資金は大きく分けて、
です。
インターネットで検索すると、さまざまなライフプランシートや診断ツールがあるので、それを使って目安をつけることができます。
生活資金は家計簿アプリなどで支出状況を把握し、老後の生活の変化を考慮して生活費を設定できれば、ライフプランシートの内容がより確実になります。
使用予定資金については、ライフイベント計画表をつくってみましょう。
次の表は、60歳で定年退職し、退職金で住宅ローンを完済、64歳まで再雇用制度で働き、65歳から年金生活というケースのシミュレーション。ここに貯蓄額や個人年金などをプラスして計算し、今後の計画を立てることができます。
経過年 | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
西暦 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 | 2024 | 2025 | 2026 | 2027 | 2028 | 2029 | 2030 | 2031 | 2032 |
私/歳 | 60 | 61 | 62 | 63 | 64 | 65 | 66 | 67 | 68 | 69 | 70 | 71 | 72 | 73 |
配偶者/歳 | 57 | 58 | 59 | 60 | 61 | 62 | 63 | 64 | 65 | 66 | 67 | 68 | 69 | 70 |
長女/歳 | 27 | 28 | 29 | 30 | 31 | 32 | 33 | 34 | 35 | 36 | 37 | 38 | 39 | 40 |
孫/歳 | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 |
夢・目標 | 国内旅行 | 海外旅行 | 国内旅行 | 海外旅行 | ||||||||||
イベント | 孫誕生 | 長女挙式 | 自宅改修 | 車買替え | 孫入学 | 孫入学 | ||||||||
予定収入/万円 | 2100 | 300 | 300 | 300 | 300 | 240 | 240 | 240 | 240 | 240 | 240 | 240 | 240 | 240 |
予定支出/万円 | 20 | 200 | 200 | 200 | 40 | 15 | 20 | 40 | 20 | |||||
基本生活費/万円 | 300 | 300 | 300 | 300 | 300 | 280 | 280 | 280 | 280 | 280 | 280 | 280 | 280 | 280 |
住宅ローン/万円 | 800 | |||||||||||||
その他支出/万円 | ||||||||||||||
収支/万円 | 980 | ▲200 | ▲200 | ▲200 | ▲40 | ▲40 | ▲55 | ▲60 | ▲40 | ▲40 | ▲80 | ▲40 | ▲60 | ▲40 |
貯蓄/万円 |
ライフプランのなかに年金受給がありますが、「繰上げ受給、通常の受け取り、繰下げ受給、自分にとってどれがトクなのか」と考える方も多いと思います。それぞれのメリット・デメリットを見ていきましょう。
繰上げ受給 | 繰下げ受給 | |
---|---|---|
利用期間 | 60~64歳 | 66~70歳 |
受給額増減 | 1ヵ月に付き0.5%減額 | 1ヵ月に付き0.7%増額 |
メリット | 定年後の収入源を補える | 受給後の年金額が増える |
デメリット | 減額された年金額が一生続く | 早く死亡すると受給増額が少なくなる |
向いている人 | 65歳前に生活費が不足する状況がある人 | 健康に自信があり65歳以降も生活費が不足する状況がない人 |
厚生年金の在職老齢年金制度の対象になる人 | ||
確認が必要な人 | 65歳時点で加給年金の対象者 |
「繰上げ受給」は早く利用できる分、1ヶ月あたり0.5%減額されます。
年金の総額は置いておき、定年退職後に生活費が補えない状況が想定される方は「繰上げ受給」に向いていると言えます。
一方「繰下げ受給」は、受け取る年齢が遅くなる分、1ヶ月あたり0.7%増額されます。
また、厚生年金加入者は、「在職老齢年金制度」により、月額の収入(年金と賃金の合計)が支給停止調整額(60歳から64歳までは月額28万円、65歳以降は月額47万円・平成31年度)を超えると、年金が減額されます。
したがって、「繰下げ受給」に向いているのは、厚生年金に加入する会社員で60~65歳以降も働く意思のある方、そして、毎月の収入が在職老齢年金制度の支給停止調整額に達してしまう方です。
ひとつ注意するポイントは、「加給年金」(配偶者や子どもに加算される年金)です。「繰上げ受給」の場合、65歳まで加給年金は受給できません。
「繰下げ受給」の場合は、繰下げ期間中に「加給年金」を受け取ることができないため、年額20~40万円の加給年金が当該期間に支給されないことを想定した検討が必要です。
「繰下げ受給」は、老齢基礎年金・老齢厚生年金はそれぞれ別に繰下げることができるので、どちらかのみを繰下げることでメリットが出る場合もあります。(「繰上げ受給」では老齢基礎年金・老齢厚生年金を別々に繰り上げできません。)
「加給年金」は受け取れなくても「繰下げ受給」をする分、年金の受取額が増額されるので、加給年金を受け取れない分の金額と受取額の増額を比較し、どちらが得になるのか検討が必要です。
自分の場合はどうなのか確認してから決めることが大切です。
老後に必要な費用には、予期せぬ病気の治療費、入院費、介護費なども入ってきます。医療費や介護費、死亡時の身辺整理費用など目的がはっきりしているものについては、生命保険を利用して備えるといいでしょう。
生命保険は、相続人一人あたり500万円の保険金が相続税非課税になるので、この金額を踏まえて、残された家族に最低限必要な保障額を考えましょう。また要介護状態に応じて介護保険金が支払われるタイプの保険があり、これを選択すれば介護時に備えることができます。
生命保険の老後の保障は、すべて一生続く終身保険にする必要があります。なぜなら、特に医療、介護のリスクには不確実性があるため、具体的な金額を備えることが難しいからです。保険で用意した分は、老後の必要資金から外して考えることができます。
保険料については、終身払いにすると毎月の支払額が最も少なくなりますが、老後の生活資金を圧迫する可能性があるため、それぞれの老後の状況を考えて、支払いが可能な期間までの保険を選ぶことが大切です。
老後資金には個人差があり、どのような生活を送りたいかによって必要な金額は変わってきますが、まずは最低限必要の金額を考え、どのように蓄え、備えていくべきかを考えることが大切です。
実際の数字で目安がわかると改善すべき点が見えてきて、将来への安心につながります。まずは簡単なシミュレーションからはじめてみてはいかがでしょうか。
2019.10.04 21:23 | |
2023.01.19 21:10 | |
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