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ピロリ菌は人などの胃に定着する細菌で、正式名称は「ヘリコバクター・ピロリ」といいます。1980年代にピロリ菌が発見されるまでは、強い酸性の胃の中に細菌が定着することができるとは誰も考えていませんでした。
その後の研究で、ピロリ菌が胃がんなど色々な病気の原因だとわかったことから、ピロリ菌を発見したオーストラリアの医師は、2005年ノーベル医学生理学賞を受賞しています。
ピロリ菌感染には衛生環境が関係していることがわかっています。そのため、上下水道が十分に普及していなかった世代の人の感染率が高く、団塊世代以前(70歳以上)の感染率は約80%と高い一方で、若い世代の感染率は低くなっています。したがって今後、感染率はどの年代でもさらに低下していくと予想されています。
また、ピロリ菌に感染する時期としては、ほとんどの場合、免疫機構が十分発達していない乳幼児、特に4歳以下であるといわれています。感染経路は、経口感染と考えられ、家族内感染が多いことがわかっています。最近の研究では両親がピロリ菌に感染していると、その子供はピロリ菌に感染する確率が高くなることが示されています。
しかし、ピロリ菌に感染して胃に定着していても、約7割の人は何の症状も現れません。胃のむかつき、胃の痛み、吐き気などの自覚症状が現れるのは、ピロリ菌が原因でなんらかの病気が発症したときのみで、ピロリ菌保菌者の約3割程度と言われています。
ピロリ菌が引き起こす主な病気は、慢性胃炎、胃・十二指腸潰瘍、胃がんなどです。胃がんは日本人の死因の中でも大きな割合を占めていますので、ピロリ菌感染の治療は非常に重要なことなのです。
残念ながらピロリ菌感染を予防する方法は、よくわかっていません。しかし、感染していたピロリ菌除菌治療を受けることができます。
除菌は、胃薬1種類と抗生物質2種類を1週間内服します。除菌治療がはじまった当初はこの1週間で除菌できる確率が高かったのですが、現在は70~80%程度になってしまいました。理由はピロリ菌が抗生物質に対して抵抗性を持ち始めたからです。そのため、1回目の除菌が失敗した場合、抗生物質を変更して2回目の除菌をします。この2回の除菌でほとんどが除菌可能になっています。
ちなみに除菌治療は2回目までが保険診療の適応になります。ピロリ菌の除菌によって慢性胃炎がよくなり、胃・十二指腸潰瘍、胃がんになる可能性が低くなることがわかっています。
このようにピロリ菌の除菌によって胃がんが予防できるようになってきましたが、早期の除菌治療が大切です。慢性胃炎の期間が長ければ胃がんの発生率も上昇するといわれています。
また、除菌によって慢性胃炎による胃もたれなどの症状も改善するという報告もあります。しかし、除菌療法には副作用もありますので、感染していた場合は除菌治療が必要かどうか医師とよく相談してください。
(監修:東京逓信病院 消化器内科医長 小林克也先生)
2019.07.29 11:22 | |
2021.07.21 21:46 | |
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