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わらび餅(Warabi-mochi)
デンプン、水、砂糖を主な材料とする和菓子。本来はわらびの根から取り出した「わらび粉」を原料とすることから、この名が付いたが、わらび粉は収穫するのに大変な手間がかかるため、昔から貴重品であり、現在の「わらび餅」はわらび粉以外の材料を使ったものが多い。
ぷるんとした食感とさっぱりした喉ごし、涼しげな見た目が特徴のわらび餅。スーパーやコンビニでも見かけるおなじみの和菓子です。「わらび」という名の通り、本来はわらびの根っこを叩きほぐして洗い出し、精製した「わらび粉」でつくられていました。しかし、同様の方法でつくられる葛粉などに比べて、わらび粉は原料の採取にも製造にも大変な手間を要し、効率も悪いため、現在は非常に希少な存在。国産だけでなく、輸入物のわらび粉も高価なのです。
つまり、身近に見かけるお手頃なわらび餅には一切わらび粉は使われず、かわりに芋やタピオカのデンプン、葛粉などが用いられています。これらの安価なわらび餅もそれなりにおいしいし何より安いので、それはそれでありがたい存在なのですが、本物のわらび粉を使った「わらび餅」のおいしさはそれとは別物といえます。
安価なわらび餅に慣れた私たちにとって、「わらび餅=透明」のイメージですが、本わらび粉でつくったわらび餅は黒っぽい、濃い色をしています。わらびの地下茎からつくるため、本物ほど黒っぽくなるのです。また、冷蔵保存するとせっかくの食感が失われてしまうので、賞味期限は短め。形をとどめているのが難しいくらいぎりぎりのやわらかさでつくられ、店内でしか食べられないものも多いので、お店で見かけたらぜひその場で味わってみてください。
わらび粉の名産地といえば、奈良県でした。昔から高級食材であったため、奈良のお隣・京都でもわらび餅は上質な茶席の上生菓子として愛されてきました。現在でも奈良や京都にはわらび餅の名店が多く残っています。保存がきかないため店頭でしか味わえない店が多いので、あらかじめチェックしておいて、旅行の際にはぜひ訪れてみましょう。
たとえば、すばらしい日本庭園を眺めながら本物のわらび餅が楽しめる「宝泉」。わらび餅は注文を受けてからつくられるため時間は少々かかりますが、つくりたてのわらび餅は黒光りしていて美しく、とろ~んっとしていてぷるぷる感もあり、「今までのわらび餅とは全く違う!」と実感できます。
京都の有名な老舗高級旅館「俵屋」がプロデュースした「遊形 サロン・ド・テ」も要チェックです。以前は俵屋の宿泊客だけに供された特別なわらび餅を、ここで味わうことができます。きな粉がたっぷりまぶしてありますが、こちらもわらび餅自体は黒光り。口に入れた瞬間に溶けるような、感動的な味わいです。
京都にはほかにもわらび餅の名店が多数ありますし、東京でも銀座にオープンした「AKOMEYA」で「黒本わらびもち」が味わえるようになりました。また、「京みずは」「老松」、愛知県の老舗「まつ月」など通販で購入できる本わらび餅もあるので、いろいろ調べてみてください。
わらびの根から採取した100%わらび粉を買って、自分でわらび餅をつくるのもおすすめ。素材が高価で扱いも繊細なわらび餅ですが、つくり方は簡単です。鍋に水と砂糖(グラニュー糖、黒糖などお好みで)、わらび粉を入れ、焦げないように練りながら加熱するだけ。灰色(あるいは褐色)がかった色から透明度が高まり、黒さが出てツヤツヤしてくれば完成。できたては「お見事!」としかいえないほどの食感が味わえるので、お試しあれ。
わらび餅の名店が多い京都ですが、じつは京都で昔から伝わるわらび餅というと、餡入りの丸い形。現在では、四角いものにきな粉や抹茶、ニッキを付けたものが京都でも一般的になりつつありますが、これは東京の葛餅の影響を受けたものといわれています。
こしあんが詰まった丸いわらび餅は、口に入れたときのツルンとした食感とほどよい甘さがとても上品で美味。地域によっては、わらび餅=夏、というイメージがあるかもしれませんが、本物のわらび粉を使った餡入りタイプのわらび餅は春から初夏にかけて販売されるのが一般的のようです。名店の絶品を、ぜひ味わってみたいですね。
2019.07.14 19:45 | |
2019.07.26 15:38 | |
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