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高知県東部に位置する中芸地域(奈半利町、田野町、安田町、北川村、馬路村)は、かつて林業で栄え、木材を運ぶ魚梁瀬(やなせ)森林鉄道、通称「りんてつ」が地域を結んでいました。「りんてつ」のまわりには現在、ゆず畑が広がり、鉄道の軌道は「ゆずロード」へと生まれ変わりました。
「森林鉄道から日本一のゆずロードへ―ゆずが香り彩る南国土佐・中芸地域の景観と食文化―」
このストーリーが2017年、日本遺産に認定され注目を集めました。そこで、ゆずが香る村であり、幕末の志士 中岡慎太郎が生まれ育った地としても有名な北川村を訪ねました。
お話をお聞きしたのは、ゆずの栽培、加工品の製造・販売などを行う「北川村ゆず王国」取締役の加藤忍さん。この会社は、日本で初めてゆず玉(生果)の輸出を実現し、現在フランスをはじめヨーロッパ各地、アジア、アメリカなど世界にゆずを届けています。
「輸出へのチャレンジを始めたのは、会社をつくった2006年。しかし、ゆずの生果をフランスに出すにはEUの厳しい規制をクリアしなければならず、何もわからない状態。そこで県に相談し、県が国に輸出条件の整備を働きかけ、契約農家さんとともに輸出用のゆず栽培に取り組みました。最初は苦労しましたが、輸出する国も広がり、輸出量も年々増えています」
「海外のシェフやパティシエは、『日本のゆずは香りが全然違う。料理に使ったときも香りがとてもいい』と言ってくれます」と加藤さん。輸出で成功したことで、国内のスーパーから「同じゆず玉がほしい」との依頼があり、海外から日本という形で北川村のゆずが広がっています。
加工品も数多く製造している「北川村ゆず王国」。工場をのぞかせていただきました。こちらでは、大量のゆずの果皮を手作業できれいにトリミングしています。取材をしたのは収穫真っ最中の11月。とても忙しく作業されていました。
細長くカットされた果皮のなかから、きれいなものだけを残していきます。手際よく選別していく様子は、まさに熟練の技です。
ゆずには、自然のまま育った「実生(みしょう)ゆず」と、接ぎ木で育ったゆずがあります。接ぎ木のゆずは約5年で実をつけるのに対し、実生ゆずは約18年かかるそう。さらに、実生ゆずは樹齢が長く、5~10mの高さにまで成長するので、高い場所に上っての収穫は危険を伴うといいます。
「実生ゆずは接ぎ木のゆずより香りがよく、欲しいという方は多いのですが、収穫が大変なので接ぎ木にシフトしています。高いところに農薬を散布できないので必然的に無農薬になり、果皮の汚れを完全にとるのが難しいのです」
「北川村ゆず王国」では、高齢化などにより放棄された畑を借り受けてゆずの栽培を行っています。
「80代のおじいちゃんおばあちゃんで農家を続けている方もいますが、『とにかくけがせんように』と言っています。放棄された畑はそのままにならないようバトンタッチして、当社では現在約4ヘクタールで栽培を行っています」
社員一丸となって収穫、加工され、できあがった商品はどれも爽やかで香り豊か。『つぶつぶゆず』という人気商品は、ジャムとしても、冷水やお湯、お酒で割ってもおいしく召し上がれます。ほどよい甘さでつぶつぶの果肉の食感があり、ゆず茶にすると心も体もほっこり温まります。
「『つぶつぶゆず』の商品名は、開発担当の女性スタッフが考えました。デザインは水玉でかわいらしく、ほかの製品には"ゆずキング"マークが入っていますが、この商品だけはかわいいマークにしています。いろんな意見を聞いてつくっています」
こちらもこの時期、体が温まる鍋料理に使いたい『ゆずぽん酢』。青ゆずごしょう入りのピリ辛味が特徴。食欲をそそります。
「ゆずサイダー」は微炭酸でゴクゴク飲めて、子どもも喜ぶまろやかな甘さ。ちょっと懐かしい味に感じました。
そしてこちらは、ゆず皮の砂糖漬け「北川村のゆず」。甘さと酸っぱさ、ほんのり皮の苦みもあって、おやつにもおつまみにも合いそうです。
ご紹介したゆず製品は、北川村ゆず王国、北川村をはじめとする高知県内の観光スポットなどで販売しているほか【Amazon】でも購入できます。
また、2017年春、高知県東部の市町村で「ゆのす美食案内―高知ゆずの国 食遍路―」という食プロジェクトがスタートし、おもに馬路村や北川村、安田町のゆずを使った料理を飲食店やホテルで食べることができます。
「北川村ゆず王国」近くにある「北川村『モネの庭』マルモッタン内カフェ『モネの家』」のメニューは、おしゃれな「四万十ポーク 焦がしバターソテー ~北川村ゆずポン酢ソース~」。ゆずの里で創作料理を食べ歩いてみるのもおすすめです。
2019.05.30 19:32 | |
2019.07.26 15:04 | |
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